創立30周年記念座談会
Symposium
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創立30周年記念座談会
利用者と職員が共に安心して
過ごせる職場を目指して
創立30周年を記念して、将来の大田幸陽会を背負って立つ中堅職員の皆さんにお集まりいただき、日々の業務で心掛けていること、自らと大田幸陽会の価値をより高めるために実践していることなどを語り合っていただきました。
出席者
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大田区立つばさホーム前の浦
事務主任清水 悠一
さわやかワークセンターの就労支援事業を経て現職。事務主任として施設予算管理、利用者の金銭管理、設備管理、労務管理を担当。趣味は楽器、音楽鑑賞。
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さわやかワークセンター
支援主任星野 真奈美
のぞみ園、相談支援室さんさん幸陽を経て現職。作業活動支援、就労移行支援、就労定着支援を担当。3児の母で、趣味は子どもと遊ぶこと。
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相談支援室さんさん幸陽
支援主任間山 広基
大田区立大森東福祉園、大田区役所の障害福祉課行政実務研修派遣員を経て現職。サービス利用計画の作成、施設見学補助等を担当。趣味は温泉・銭湯巡り。
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大田区立大森東福祉園
支援主任宮田 理麻
入職後、大田区立大森東福祉園で健康活動や運動などの生活介護を担当。現在は主任としてOJTを含めた新任職員の教育・育成も担当。趣味はクラフトビールを飲むこと。
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大田区立しいのき園
事務主任室伏 澄代
大田区立つばさホーム前の浦の支援員を経て現職。産休・育休をはさみ、現在は事務主任として労務管理等を担当。趣味は、家族でキャンプ。
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障害者生活ホーム
支援主任山田 薫
さわやかワークセンターのボランティアを経験したことがきっかけで入職。現在は生活ホームの支援主任として幅広い支援業務や世話人業務を担当。趣味は野球観戦とYouTube鑑賞。
司会
まごめ園 施設長 竹村 直巳
アンテナを高くし、広い視野で物事を見る
司会 本日ここにお集まりの皆さんは、各職場で中核的な役割を担っておられます。自分が成長するため、そして施設の円滑な運営のため、日頃どのようなことを心がけ、実践しておられますか。
清水 大田幸陽会で9年間働いてきて思うのは、周りの環境に合わせて自ら変わることの大切さです。自分が変われば見方や考え方が変わり、より広い視野で物事を見ることができるようになります。
そのために実践していることは、普段から本を読んだりニュースを見て情報を取り入れるほか、好きな映画を見て感性を磨いたり、自分の知らない世界に関する知識を増やすことを心がけています。もちろん、事務の仕事に必要な新しい制度や法律、規程などの勉強はしますが、そこからちょっと離れて、アンテナを高くすることが仕事の幅を広げ、自分が成長していくためには必要だと思っています。
星野 毎日が慌ただしくて、じっくり勉強したいとは思っていても、実際はなかなかできていません。言い訳になるかもしれませんが、勉強というのは、ただ書物を読んで学ぶだけではなく、いろいろな人と接することで吸収できるものもあると思います。私にとって、利用者の方々からも、自分の子どもからも学ぶことがたくさんあります。世の中の出来事、今話題になっていること、芸能界のことなど、私の知らないことがたくさんあって、それを教えてもらうことで話題が広がりますし、さまざまなことに関心を持つことによって、幅広い視野から物事を見て判断できるようになると思っています。
山田 私は今のグループホームに異動になってから、利用者の後見人、利用者が就労する会社のジョブコーチ、医師、ケアマネージャーなどいろいろな人と接する機会が増えました。それぞれ専門的な知識をお持ちの方ばかりで、そのお話を正確に理解するために、前もって予備知識を仕入れたり、予め聞きたいことを整理しておくようにしています。そして、そこで得た知識をみんなと共有するときは、聞いたことを右から左に伝えるだけでなく、自分なりに考えたことをつけ加えて話すことを心がけています。異動してきた5年前の自分を振り返ると、そんなことは考えもせずに、ただ目の前の仕事をこなすことに精一杯でした。その頃と比べると少しは成長できたかなと思っています。
宮田 正直、あまり勉強は好きではないのですが、制度のことなどを聞かれたとき、わからないことがあったらそのままにしないですぐ調べる癖をつけるようにしています。それによって、相手の人に正しい情報を伝えることができるだけでなく、自分の知識量も増えて一石二鳥です。あとは、とにかく自ら手を上げてやってみることですね。やってみなければわからないことが現場にはたくさんありますから。
間山 私は、良いことも悪いことも、後で必ず振り返ることを心がけています。悪いことはもちろんですが、「今日は良い支援ができたな」と思った日でも、時間をおいて冷静になってから考えてみると、意外に新しい気づきがあります。自分では「良い」と思っていても、利用者や他の職員の思いはどうだったのかと考えることによって、より客観的で広い視野から自分を見ることができ、次につなげられると思います。
室伏 私は、学生時代はスポーツに打ち込んでいました。そのせいか、仕事でも、自分との勝負という気持ちで向き合っています。例えば、利用者が喜んでくれたら勝ち、支援員の役に立てたと思えたら勝ち、という感じです。何か新しい仕事を任されたときも、そこには何か理由があるはずだと考えて、まずは失敗を恐れずにトライしてみます。そういう勝負になぞらえて仕事をする姿勢が、結果的に成長につながっているのかもしれません。
対応に追われたコロナ禍の3年間
司会 この3年間を振り返ると、皆さんコロナ対応に振り回されたのではないかと思います。特に大変だったことはありますか。
清水 つばさホーム前の浦では濃厚接触者の人も受け入れていましたので、その対応には神経を使いました。最初は陰性でも、受け入れた後すぐ陽性になるケースもあり、自宅に帰れない人はそのまま2〜3日ホームで過ごしてもらったこともあります。その時は感染拡大防止のために、ゾーニング用の仕切りを手作りするなど、いつもとは違う苦労がありました。
山田 コロナがピークのときは、感染した利用者を入院させようとしても、受け入れてくれる病院がなかなか決まらなくて、本当にハラハラしました。また、グループホームの勤務の性格上、職員の替えがきかず、もし自分が倒れたら、10日間にわたって夜勤の穴埋めを他の職員がせざるを得ず、大変な迷惑をかけてしまいます。それだけは絶対に避けようと、ホームではずっと防護服を着て支援をしていましたし、休みの日も感染リスクを減らすために部屋から一歩も出ませんでした。
星野 私は3人の子どもがいるので、保育園が休園になったときは本当に困りました。その間は働きに行きたくても家を空けるわけにはいかず、心苦しかったのですが休まざるを得ませんでした。
間山 コロナ期間中、私は大田区役所に派遣されていました。そこで病院や一般会場での接種が難しい方のための会場運営等の手伝いをしていました。ワクチンは打ちたいけれど注射の経験がない人もいて、そういった方々に施設での経験を生かして接種の補助をしていました。
宮田 大森東福祉園には重度の障害を持つ利用者もいて、感染防止には特に気を配りました。緊急事態宣言中は登園自粛のお願いをしましたが、園の方針として登園を希望する人は受け入れることにしていましたので、窓の換気や消毒を徹底する一方、自宅で自粛生活を送っている人には電話で様子を確認するということもしていました。
司会 それだけ気をつけていたにもかかわらず、大田幸陽会全体でも多くの方がコロナに感染しました。そのときの対応も含めて、職員の方は本当に大変だったと思います。
職員に寄り添い、仲間を気遣える存在でありたい
司会 皆さん責任のある立場で働いておられますが、個人として、あるいは職場全体として課題に感じていることはありますか。
清水 さわやかワークセンターにいたときは、支援員と同じ日中の時間帯に働いていたので、その日に起きたことや懸案事項をお互いに共有できていました。利用者との直接のかかわりも多くありました。しかし、つばさホーム前の浦に事務方として異動してきてからは、利用者の人たちが出て行ってから出勤し、利用者が戻ってくる頃に自分が帰るという、すれ違いの日々になりました。また、支援員たちが働いている夜間には職場で空間を共にすることもできません。そのため、利用者や支援員たちと同じ目線に立ってコミュニケーションを行うことがむずかしく、それが課題だと感じています。細かいことですが、消耗品をどこに保管するかを決めるとき、事務職としては管理しやすいよう1ヵ所に集めるという発想になりがちですが、支援を行う立場だと、動線を考えて分散したほうが便利だと思うかもしれません。そういった、一緒に働いていないとわからない日々の情報や思いを、どうやって共有するかが今後の課題だと思っています。
星野 私は、時間に追われて仕事をしている現状こそが課題だと思っています。理想は、事務的な業務を効率よく順序立てて処理し、利用者にかける時間をより多くすることですが、現実はなかなかそのようにはできていません。そんな中で心がけているのは、利用者の前では決して忙しさを見せないことです。忙しそうにしていると話しづらいでしょうし、結果として良い支援ができなくなります。場合によっては、事務作業を中断して利用者と接する時間に充てることもありだと思います。
これは子育てにも言えることで、子どもたちが話を聞いてもらいたがっていると思えば、できるだけ家事の手を止めて子どもと向き合うようにしています。もちろん事務の仕事や家事をおろそかにしていいわけはありませんから、そのへんのバランスをどうやって取っていくかが、常に自分の課題だと思っています。
山田 私は、限られた時間でいかに職員とコミュニケーションを取るかが課題だと感じています。経験の浅い職員や非常勤の人の中には、わからないことや悩みがあっても、相談する人がいなくて一人で抱え込んでしまうケースが少なくありません。そうならないよう、特に優先度が高いと思う人をその場その場で判断し、できる限り話を聞くようにしています。
できれば8つあるユニットの全てを回って話を聞きたいのですが、物理的に無理なことが一番の悩みです。毎月職員が集まる支援会議や職員会議はありますが、議題をこなすだけで時間が過ぎてしまい、悩みなどを聞く時間がありません。福祉の現場では日々小さな問題が起きますが、それを上司や同僚に聞いてもらうだけで、気が楽になります。ですから職員や非常勤の人たちと問題を共有するような場づくりが、これからの自分の役割だと考えています。
宮田 最近よく思うのは、仕事が属人化しているのではないかということです。組織として見た場合、その人しか知らない、その人しかできないという仕事は極力なくすべきで、その人がいなくなると支援ができないという問題だけでなく、個人が悩みも含めて全て抱え込んでしまうことになりかねません。
間山 私個人の課題としては、異動先でいかに新しい仕事に慣れて取り組めるようになるかというところです。これまで異動の度に全く新しい仕事に変わっていますが、サービスを受ける側の方々に対しては、例えまだ分からないことがは多くとも、誠実に対応していく必要があると思います。より適切な対応をしていけるように自身で調べたり、経験を積む中で学んだりしながら力をつけていきたいです。しかし、テレワークや出張等で事務所にいる職員が少ないこともあり、思い立ったタイミングで分からないことを聞くのが難しいこともありますね。一方、直接支援の現場としての課題は、コロナで控えていた行事が一気に復活しつつある中、行事経験のある職員が少なくなっていることだとも感じます。その状況で一から体制を立て直すのは簡単ではないですが、必ずしも過去のやり方にとらわれず、新しいやり方を考えていけるとよいかと思います。
室伏 私は事務職となり、勤怠管理などの仕事をして8年になりますが、職員を大事にすることの重要性を改めて感じています。今日は元気がないなと思ったら、「大丈夫?」「今日は早く帰ったら?」と一声かけ、どんなことでも話しやすい雰囲気や関係性作りを日頃から心がけています。そうやって職員がお互いのことを気にかけ、仲間を大切にすることが、結局は利用者を大切にすることにつながると思います。
間山 私も、利用者と職員が安心して過ごせる、安心して働ける場所であるべきだと思います。職員がいつもセカセカしていたり、怖い顔をしていたら、利用者は安心できません。また、利用者は職員の人間関係も敏感に感じ取ります。まずは自分が相手の話をよく聞き、相手がどう思っているかをよく考えるところから始めて、穏やかな雰囲気づくりにつなげていきたいと思います。
星野 職員を大切にするということは、何か特別なことをするのではなく、いつも相手のことを気にかけるということですね。例えば、「ちょっといいですか」と聞かれたとき、笑顔で「いいですよ」と返すようなことの積み重ねが大事ではないでしょうか。私自身もそのような関わりができるように心がけています。
宮田 中には自分から聞けない職員もいますから、こちらから「何か困っていることはない?」って声をかけてあげることも必要ですね。そうやって職員に寄り添い、仲間を気遣える存在でありたいと思います。
新型コロナ感染拡大で途絶えた地域との交流を
増やしていきたい
司会 今後、大田幸陽会の価値をさらに高めていくために必要だと思うこと、そのために皆さんが心がけていることはありますか。
山田 コロナで次々と行事が中止になって、以前まごめ園で行っていたお祭りがいかに貴重な場だったか初めて気づきました。新型コロナも5類に移行したので、これからはラナハウス西糀谷のスペースを地域の方に開放したり、手芸サークルの講師を地元の方にお願いするなど、途絶えてしまった地域社会との交流をどんどん増やしていきたいと思います。
星野 私が担当している就労支援は地域社会との接点そのもので、受け入れてくださる企業を少しでも増やしていきたいと思います。さわやかワークセンターを経て就職した方々が、会社の中で懸命に働いている姿を見ると、本当にすごいと思うのです。受け入れ先の職場の方々もそれぞれの方をとても気にかけてくださり、働きぶりやその日の様子を教えてくださいます。そういうことを通じて、私自身とても刺激を受けて、自分も頑張らなくちゃという気にさせられます。
山田 私も、就労先の方から「時間を守ってしっかり働いているよ」という話を聞くと、感動します。就労することで間違いなく社会でやっていく力がつきますし、私もそのお手伝いをしていることに大きな意義とやりがいを感じています。
司会 最後に、これからの目標、抱負をお聞かせください。
清水 事務の立場から、利用者が笑顔でいられる場づくりに貢献することが目標です。事務であろうと支援の現場であろうと、目指すところは同じだと思います。
星野 利用者、職員、地域の方、企業の方、そして自分の家族の一人ひとりを大切にすることをこれからも心がけていきます。
山田 今日話したことは他の職員も感じていることだと思いますので、みんなにその想いをつなげていきたいと思います。
宮田 私自身、周りの人に助けていただきながらここまできました。同じことを後に続く人にしていくことが今後の抱負です。
間山 利用者が望む生活、安心して暮らせる生活を送ることができるよう、サポートしていきたいですね。そのためにも、職員がより安心して働ける職場を目指したいと思います。
室伏 事務の仕事も支援の仕事も、やっていることが違うだけで、そこに垣根はありません。利用者には「今日は楽しかった」と幸せな気持ちで帰ってほしいですし、職員には「いい支援ができた」と充実した思いで1日を終えられるようになってほしい。そんな小さな幸せを誰もが感じられるよう、自分の立場で貢献していきたいと思います。
司会 本日はどうもありがとうございました。
各職員の所属は取材・撮影時のものです